真・MFC千夜一夜物語 第334話 MFCの健康診断 その3
マスフローコントローラー(MFC)やマスフローメーター(MFM)の健康診断はどこで受けるの?という質問に対して、ユーザーが自社内の社内校正基準器を使用して流量を測る場合のお話です。
前回「基本的にユーザーでは絶対流量の測定を行うのではなく、半年前と比べてどうだったか?というマスフローの繰り返し性能に問題が生じていないかを確認できればいい・・・」と書きましたが、ここでもう一度、「MFCの精度と繰り返し性」に関して、お話ししておきましょう。
この2つの言葉は、以前ご説明したように、下図で示したような関係にあります。
MFCのカタログに記載されたスペックで一番使う言葉なのに、正確な意味を把握されていないのがこの精度という言葉です。
JIS Z 8103 計測用語での定義では「測定結果の正確さと精密さを含めた、測定量の真の値との一致の度合い」となっていまして、対応する英語表記は accuracy です。
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター 国際計量室 計量学・早わかり(第3版)にある accuracy of measurment(測定量について測定された値と真の値との一致度)がわかりやすい表現かと思います。
では、 "真の値"はどこにあるのでしょう?
その本来あるべき場所は、国家定めたの流量基準 です。
つまり精度を謳う上で、メーカーはキャリブレーションで使用する流量基準器と、国の流量基準器との間のトレーサビリティを証明できなくてはいけません。
それを証明するドキュメントである「校正証明書」、「トレーサビリティ体系図」(トレーサビリティ体系図はJCSS等の校正証明書があれば不要)を、必要とあれば提示しなくてはならないのです。
それに対して繰り返し性とは「同一の測定条件下で行われた、同一の測定量の繰返し測定結果の間の一致の度合い」であり、対応する英語は repeatabilityです。
再現性と混同しやすい言葉ですが、明らかに定義が異なるので注意が必要です。再現性は「測定条件を変更して行われた、同一の測定量の測定結果の間の一致の度合い」であり、対応する英語は reproducibility です。
黎明期のMFCのカタログスペックでよく再現性と表記されていた項目が、実は繰り返し性の誤りであることを指摘され、近年は修正されてきています。
「MFCのような制御機器の流量値の繰り返し性の積み上げが、最終的な製造装置の再現性を決定する。」というような表現でDecoは使い分けていますので、ご参考まで。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan