真・MFC千夜一夜物語 第355話 超高温用マスフローの現状 その3

2022年02月22日

久しぶりに高温用マスフローコントローラ(以下MFC)マスフローメータ(以下MFM)に関して、情報のアップデートをしていきたいと思います。
高温用マスフロー(MFCとMFMの総称)の問題点を整理してみましょう。
高温用マスフローは、その特殊な構造が災いして2つの問題点を持っています。

1つは熱式流量センサーの寿命が短くなる事であり、もう一つは信号系がノイズに弱い事です。
寿命に関しては、割り切ってマスフローを交換していけばいいのではないか?という考えもあるかと思います。
ところが、半導体製造装置でマスフローを交換する為には、装置を一旦止めて対応しなくてははいけません。
TAT(Turn-Around-Time)の点から、そういったロスはできるだけ少なくしたいです。
それに寿命が1年と仮にメーカーが謳ったとしても、その間で経時変化が生じないわけではありません。

危惧される不具合はゼロドリフトです。
先述の通り、一般的に高温マスフローは常温のそれよりも高いセンサー温度設定になっています。
それは、センサーとして特殊な高温度域にフォーカスするためにセンサー感度を引き上げなくてはならないからです。
それ故、相対的にゼロドリフトのリスクは大きくなる傾向があります。
流量制御しているMFCが経時劣化で、ゼロがずれ始めると何が起こるか?これは何度か解説していますね?そう、制御しているガス流量の繰り返し性を悪化させてしまうのです。

これは常温用のMFCでも問題になることで、熱式流量センサーを使うマスフローに付きまとう問題です。
この現象はセンサー管の上流下流で対になった巻線の抵抗値のバランスが崩れる事で発生します。

当然、温度が高い高温用センサーでは経年変化は激しくなります。
最終的に断線等の問題が起きた時点で「寿命」という表現をしますが、実際には寿命が来る随分前から、この対になった巻線の抵抗値のバランスは崩れ出しているのです。
ゼロはズレ分がそのまま測定された流量値に乗っていると考えて良いので、大きな流量誤差につながります。
精度±0.5%R(S.P.)といったのマスフローのカタログスペックに着目して選定しても、そのマスフローのゼロが1%ズレしまったら、測定流量の読値はそのまま1%ずれる訳で、余程こちらの方が問題なのです。

これは流量出力のゼロの位置で確認ができます。
こまめにゼロリセットを行って運用していれば、くり返し性への影響は少なくできます。
でも、そもそもゼロリセット頻度が上がるというのは、センサーの寿命が来る日が近いという事ですから、交換スケジュール、代替品の準備を計画しておかなければいけません。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan