真・MFC千夜一夜物語 第367話 ダウンサイジングこそ技術革新の証です その4
マスフローメーター(MFM)、マスフローコントローラー(MFC、MFMとMFCをマスフローと総称。) のダウンサイジングの歴史に関して解説していきましょう。
106mmコンパクトMFCという存在は、その後のIGS(Integrated Gas System)の時代に大きな影響を及ぼします。
300mmウエハー対応半導体製造装置のガス供給系では、IGS対応のMFCが採用されました。 IGS対応MFCでは、従来の面間寸法に似た規格としてポート間寸法(ピッチ)が存在します。IGS対応機器はダウンポートと言って、機器の底面に流体の入口出口があります。
このポート間の距離が92mmと79.8mmという異なるピッチの二つの規格が存在してしまったのです。
簡単に言えば、スタンダードサイズ(面間124mm)のMFCをベースにしたものが92mm、コンパクトMFC(106mm)をベースにしたのが79.8mmになったのです。
そして、スタンダードサイズが米国の装置メーカー、コンパクトサイズが日本という海を越えた二つの規格として存在してしまったのでした。
IGS対応MFCにはもう一つの規格があります。
MFCの奥行方向の寸法です。
これは本来IGSが1.5インチもしくは1.125インチスクエアな正方形を底面形状とした機器を組み合わせるモジュールだからです。
そもそもMFCだけはその正方形サイズに収まらない為、横長な長方形の底面形状となってい,ます。
IGSでは更にもう一つのシール形状の規格があります。
WシールとかCシールといった名称のものです。
このシール形状が異なれば、ピッチや奥行き寸法が合っていても接続することができないので要注意です。
WシールとかCシールというシールの規格に応じてMFCの底面接続部の加工形状そのものが異なるので、シール材だけを変えたら接続できる訳ではないので注意して下さいね!
IGS対応MFCを技術面で考察すると、面間寸法、そして奥行方向での寸法を小型化するべく努力がされているのがわかります。
特に79.8mmピッチは106mmMFCでの日本のMFCメーカーの苦労が活かされています。
また、1.125インチの奥行き寸法に合ったMFCを作り上げる為に、米国MFCメーカーもソレノイドアクチュエーターやバルブの構造を大きく見直す機会となったのが見て取れます。
何よりDecoが進化と捉えているのは、スタンダードとコンパクトだけでなく、複数存在するIGSやシール方式に合わせてMFCの入口、出口側フランジをモジュール化する事で、オーダーに応じたMFCを組み上げる事を可能にするという、いわば"作りやすいMFC"が現れたことです。
堀場エステック(株)のZ500シリーズやブルックスのGF100シリーズは大量生産を踏まえた上でフレキシブルに仕様対応も可能で、PI(Pressure Insensitive)等の新技術への拡張性もある現世代MFCの傑作シリーズと言えるでしょう。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan