真・MFC千夜一夜物語 第387話 流量制御バルブとアクチュエーター その7

2023年01月24日

マスフローコントローラー(以下MFC) の流量制御を司る流量制御バルブとそのアクチュエーターに関して再び解説していきましょう。
これからのMFCの流量制御バルブに今後求められるのは、高速応答と大差圧制御です。
高速化の需要は半導体製造装置で根強く、大差圧制御は高圧でガスをハンドリングするような一般工業分野で多いのです。

その内、高速化に関しては今までも都度解説してきましたが、MFCという流量制御システムとしてのパッケージで考えなくてはいけません。
極論するならば、MFCで流量センサーからの信号を設定信号と比較制御させて、更なる高速応答をさせるのは、すでに限界に来ているのです。
アクチュエーターをどれだけ速くしても、今のフォーマットでは画期的な高速化には至らない事は見えています。

故に一つの方法としては、流量センサーを高速化する事なのです。
MEMSタイプの直接流体に接触して熱の移動を測定する流量センサーを採用する、もしくは熱式以外の流量センサー、コリオリ式や圧力式を採用する事です。
実際一部の深掘りRIE装置等では熱式MEMSセンサータイプのMFCを酸素流量制御ラインで使用して成功している事例があります。
だが、半導体製造装置で使用するガスには、接触式のMEMSタイプセンサーを嫌う腐食性の強い材料があります。
具体的には下図で示すようなトラブルが懸念されます。

現行の巻線タイプが長く使われている理由が、センサー部チューブ外周に設置される巻線が流体に非接触な事が評価されているからで、ガス種によってはMEMSセンサーへの置換が難しいと判断されています。
それ故にDecoはMFCのフィードバック制御を装置側から介入して停止させて、装置からダイレクトにMFCの流量制御バルブ開度を制御する事が可能なMFCを提案しています。
高速応答が必要な場合は、MFCの流量センサーは流量モニターに徹して、流量制御バルブを装置側で直接操作する。
逆に流量が安定してきたら、少々環境条件が変化しても自動追従するようにMFC側に流量制御のイニシアチブを渡す。
これは産業用イーサーネットが普及し、EtherCATのような高速ネットワークが構築できるようになった今だからこそ実現できる装置との親和性の高いMFCの新世代だとDecoは考えているのでした。

もう一つの課題が大差圧制御は次回お話ししましょう。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan