真・MFC千夜一夜物語 第398話 MFCの流量はなぜずれるの? その2

2023年04月25日

熱式マスフローコントローラー(MFC)のユーザーから、「MFCも流量出力は変化が無いのに、どう考えても流量がずれているように思えるのですが・・・」という問い合わせを頂く事があります。
ハンチングやオーバーシュート、応答遅れ、出流れといったMFCの不具合でもP.V.をモニターすることで容易に異常を検知できるトラブルならば早期発見が可能です。

でもP.V.に異常が現れず、表面上MFCには何ら問題がないように思える状態で流量制御をさせていたら、実験結果や製品品質に問題が確認されている事がわかり、遡れば数か月前から・・・といった事態は、非常に大きな損害を発生させることになりますね?

ここで考えられる原因は二点です。
一点目はゼロシフトが生じている場合で、もう一点は実際に流量信号と実流量にずれが生じている場合です。
各々を解説していきましょう。

ゼロシフトから生じる流量異常

ゼロシフトとはマスフローの流量出力のゼロ値が理論上の流量ゼロからずれる事象です。
MFCが制御する実流量に影響を及ぼします。
このゼロシフトがなぜS.V.=P.V.状態で流量異常を引き起こすのか解説しましょう。
フルスケール100SCCMのMFCがあったとします。
このMFCにゼロシフトが生じていない場合の制御されている実ガス流量は100SCCMの筈ですね?
ところが-5SCCM分のゼロシフトが起きたとすると、どうなるでしょうか?
実流量0でP.V.は-5SCCMであるということは、逆にP.V.が0になった時点で実流量は+5SCCMです。
つまり流量センサーからの出力であるP.V.のゼロのシフトが発生した場合、流量測定の基準がシフトするので下図にあるように制御される流量はその誤差を含んでしまう事になるのです。

ゼロシフトの発生原因に関しては、本ブログでも解説済みですが、大きく分けて以下の6つの原因が考えられます。

①センサー巻線の抵抗値変化マスフローの流量センサーに使用されている対になる巻線の抵抗値バランスが崩れてしまっている。

②ガスの熱対流現象マスフローのセンサー管と層流素子(バイパス)部で熱対流現象が発生している。

③流量制御バルブでの出流れMFCの流量制御バルブの前後に圧力差があり、制御バルブを閉止してもわずかにガスが漏れ出している。

④ゼロの誤調整マスフローのゼロ調整の際に、正確な値に調整できていない。

⑤設置環境の変化 マスフローの設置環境(温度、湿度)が変化している。

⑥その他 外的要因マスフローの外部機器=流量表示計でのゼロシフトや、信号系でのノイズ影響、通信異常等の外的要因が存在している。

さて、この中のどこにフォーカスすればいいでしょうか?

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan