真・MFC千夜一夜物語 第415話 マスフローに関する誤解 その6

2023年10月24日

Decoが見聞してきた中で、マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)の使用方法に関して、一般的に大きな誤解があるなぁと思ったものを取り上げてお話ししていきたいと思います。

今回はAPC(Automatic Pressure Controller)とMFCを直列に接続した場合の問い合わせに対応してみましょう。
「二次圧(供給圧)制御型APCとMFCを直列に接続したら安定しないのです!」という質問に対するDecoの回答は「当たり前なので、やめてください。」というこれまたそっけないものです。
なぜならAPCとMFCは前回お話ししたようにどちらも流量を制御するバルブを備えているからなのです。
それが直列に1対1で制御をしている場合を想像してみましょう。

MFCが流量を流そうとしてバルブを開くと一時的にMFC上流=APCにとっての下流配管からガスが多く払い出されてしまうので、この部分の圧力が低下してしまいます。
圧力低下をAPCの圧力センサーが検知すると、当然APCのバルブを開くことでAPCの上流から不足している分のガスを流して圧力を回復させようとしますね。
APCとMFCの個々の役割分担が上手く作動している場合、つまり比較的設定流量、圧力が一定で圧力変化が少ない場合は良いのです。
だが、そうでない場合、あるタイミングでMFCとAPCの自動制御がケンカを始めてしまうことがあります。
最悪は両方の制御がオシレーションを起こしたりして、延々と落ち着かなくなってしまうような状況に陥ってしまう事もありました。
これは、両者が同じ流量制御する方式の制御バルブを使いながら、MFC側はセンサーの応答速度が遅い熱式流量センサーと、APC側は比較的速い歪み検出型の圧力センサーを搭載しているのが一因です。(この問題は実はAPCでなくても機械式調圧器とMFCとの間でも起きます。レギュレーターとMFCとの配管距離が極端に近く、MFCに払い出すガスのバッファーが少ない場合に発生しやすくなる傾向がありました。)

APCとMFCでの制御トラブルが生じた場合、制御系に精通した技術者が居合わせれば、MFC側の応答定数を再調整することで、なんとかなだめすかしてもらえます。
だが、それはある意味、片方の制御をダルくしてしまうこと=存在意味がないことにもなりかねないので、筆者はAPCとはMFMの方が相性は良いし、それなら圧力センサーと流量センサーを二つ、流量制御バルブを一つ搭載したハードを作り、MFCと圧力センサーの組み合わせモードと、APCとMFMの組み合わせモードを切替えて使えればいいのではないか?と考えていたら、ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)でも同じことを考えた技術者がいたようで、昨年FLEXI-FLOW Compactという新世代のモジュールが発売されました。

出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

当然、これだけ複雑なモード切替を行うモジュールなので、デジタル通信オンリーな仕様となった。アナログが大好きな日本市場で果たしてどうだろうか?という懸念はあるのですが、Decoは全面肯定派です。
こういったフローコントロールの未来を見据えた提案が産まれてくることを歓迎したいと思っています。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan