真・MFC千夜一夜物語 第416話 マスフローに関する誤解 その7
Decoが見聞してきた中で、マスフローメーター(MFM)、マスフローコントローラー(MFC)の使用方法に関して、一般的に大きな誤解があるなぁと思ったものを取り上げてお話ししていきたいと思います。
MFCとAPC(Automatic Pressure Controller)の話が出たので、このお話の最後におまけでAPCに関してもう少しお話しておきましょう。
以前の記事でAPCには背圧制御型と供給圧制御型が存在しているという解説をしましたね?
そして、APCには大きな弱点があることも・・・
それはAPCの一番大きな特長である「流体の圧力を測定し、予め設定された圧力値になるように制御バルブで流量を制御し、その制御した流量を送り込む、もしくは引き出す事で、結果として圧力を制御する」にあります。
つまりAPCは圧力をダイレクトに変化させている訳ではなく、背圧制御型ならば吐き出す、そして供給圧制御型なら送り込む流量を可変する事で結果として対象となるチャンバー(容器)の圧力を変動させている事にあるのです。
もし入口のみで出口がない容器、つまり袋小路のワークであった場合、APCから送り込まれた流量が過大であった場合、封入された圧力は設定圧力を超えて、二度と下げる事は出来なくなってしまいます。
その為、一般的にはポンプ等で積極的にチャンバーを排気するプロセスもあれば、若干与圧に保つべく機械的な絞りを設けた排気系を設けるようないわゆる出口を用意する事になるのです。
ここで供給圧制御型と背圧制御型の2つのAPCでチャンバーを挟んで対峙させる構造にするのですが、注意しなくてはいけないのは双方の圧力制御の干渉です。
こういったAPCの持つジレンマを解消し、常にプロセスチャンバーを設定した圧力で安定させるAPCが開発されています。
先日ご紹介したブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)のEL-PRESS/IN-PRESSP-800シリーズです。
出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
ブロンコストは供給圧制御型APC P-600、背圧制御型APC P-700で多くの実績を有しているメーカーです。最大圧力400barまでと日本製APCとは比較にならない高圧領域で確実な動作を行える唯一の存在で、各種工業プロセスで活躍しています。
流量制御だけではなく、圧力制御も社業の一つとしているブロンコストからの提案されたAPCの新しい形がこのP-800シリーズなのです。
一見すると、MFCタイプのボディにバルブと思わしきものが二つ付いている不思議な形状ですね?
次回の解説でその姿の意味をお話ししましょう。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan