真・MFC千夜一夜物語 第417話 マスフローに関する誤解 その8

2023年11月14日

Decoが見聞してきた中で、マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)の使用方法に関して、一般的に大きな誤解があるなぁと思ったものを取り上げてお話ししていきたいと思います。
MFCとAPC(Automatic Pressure Controller)の話が出たので、おまけで供給圧制御型APCと背圧制御型APCの変わり種ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)のP-800シリーズに関してお話しておきましょう。

P-800のフローは上図のようなものになります。
ガスの入口にソレノイドの比例制御弁1があり、その下流に圧力センサーがあります。
この配置は供給圧制御型APCそのものですね?
しかし、大きく異なるのは圧力センサーの手前に分岐があり、そこから排気側へのパスが設けられている事です。
ここにもう一つ比例電磁弁2が設けられています。
このモデルの異形さの原因であるボディ横に2つ配置されているバルブはこの2つの比例制御弁で、これらは元々MFCやAPCで用いられる流量制御バルブと同じ構造のものです。

では、実際の圧力制御で、これらはどのような動きをするのでしょうか?
P-800を使用するに当たって、特別変わった操作は必要ありません。
ユーザーはP-800の下流に設置するチャンバー内の圧力に関して希望する設定値を入力して、後はP-800に任せておけばよいのです。

まずガスを導入してチャンバーの圧力を上げていく際、P-800は上図左のような制御を行います。
比例電磁弁1を開度調整し、比例電磁弁2は閉止します。
そうするとP-800は供給圧制御型APCとして圧力センサーで感知した下流の圧力測定値(P.V.)と設定入力された目標値(S.V.)を比較して、比例制御弁1の開度を自動制御するのです。

次に何らかの理由でチャンバー圧を下げたい場合は、P-800は上図右のように圧力を下げる動作を行います。
まず比例制御弁1を閉じてガスの供給を絶ち、今度は排気側の比例制御弁2を開度調整し始めるのです。
このモードでのP-800は、今度は背圧制御型APCとして圧力センサーで感知した下流の圧力測定値(P.V.)と設定入力された目標値(S.V.)が一致するように比例制御弁2の開度を自動制御しています。
つまり圧力センサーは共通で、二つの比例制御弁で供給側と排気側の流量制御を必要に応じて使い分ける仕組みなのです。

Decoもこのアイデアには驚かされました。
なかなか柔軟かつ、面白い発想ですね。
この2つのソレノイドを使った比例制御バルブの制御は口で言うほど簡単ではない筈です。
圧力スイッチを置いておき、昇圧を行い、設定値に到達した段階で、三方弁で排気側へ流路を切り替えるギミックをDecoも考えたことはあったのですが、そんな簡単なものではありません。
バルブ切り替えだけではなく、二つの制御弁の特性やKv値に応じた制御アルゴリズムの設定はかなり高度なものになると思えます。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan