真・MFC千夜一夜物語 第423話 MFCの応答性能 その5

2024年02月13日

章を改めて巻線型熱式流量センサーを搭載したマスフローメーター(MFM)の応答がマスフローコントローラー(MFC)のそれよりも決して早くはない理由のお話です。
流体に腐食性ガス、毒性、可燃性ガスが多い半導体製造分野では、やはり流体に非接触である巻線型流量センサーが好まれます。
しかし、流体に直接触れない巻線型は応答性の面で不利な方式です。
巻線型流量センサーを搭載したMFCはどうやって応答性能を向上させたのでしょうか?

下図のように実際の流量に対して、巻線型流量センサーのブリッジ回路から得られる生の信号は遅れて出力されます。(あくまで遅れのイメージを説明する為の図ですので、あえて実流量を理想的なステップ応答波形にしていますが、実際はガスではそうなりません。)
この流量信号を用いて設定信号と比較し、流量制御バルブ開度の制御を行えば当然制御が遅れる事になります。
応答性の1秒以内とかいうのは夢の世界なのです。

このままではよろしくないので、センサー信号に図のような微分信号を加味する方法が考案されました。

これによりセンサーの応答性は若干改善されるのですが、半導体製造装置、特にエッチャー等で要求された高速応答と言うレベルには至りません。
応答が遅いというのは、流量制御ではただ単にガスの導入が遅れるだけではなく、下手すると過大なガスが流れてしまっているのに、流量制御が間に合わず、そのまま放置してしまいかねないので危険です。
そこで考えられたのが、前回の解説で登場した図なのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan