真・MFC千夜一夜物語 第437話 MFCの歴史を振り返ろう その13
マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
前回からアナログ制御とデジタル制御のお話をしています。
外部から入力された設定信号(SV)がアナログの場合、それをAD変換してデジタルPID制御回路に送ります。
センサーからの流量信号(PV)もまたアナログなので、信号をAD変換します。
両者をデジタルPID制御回路で比較して、バルブ制御信号(MV)を出力しますが、これはデジタル信号なので、アクチュエーターを駆動するためにはDA変換してアナログ信号で伝えなくてはいけません。
また、PVは流量出力として外部に取り出す必要上、ここでもDA変換してアナログ信号にしなくてはならないのです。
更に上位の制御系も同じようにデジタル制御系を持っていたとすると、そこでもまたAD/DA変換が相次ぐ事になります。
「デジタルMFCはアナログMFCより性能がよいのですか?」という質問に対してDecoは「必ずしもそうとは限らないです。」と答えて、こういった解説をする事があります。
アナログ-デジタルの変換が続くと、気になるのが変換ロス、変換が続くことによる誤差拡大です。
例えばA/Dコンバーターはアナログの信号をデジタル信号に変換しますが、その変換に関しては分解能がその性能を左右します。
分解能の性能を二進数の桁数=ビットで表します。
デジタルMFC黎明期は8ビットを使用していましたが、分解能的に充分であったとは言い難く、その後12、16とビット数は増えていき分解能はよくなっていくが、どこまで分解能を上げて行っても、アナログデジタルの変換という、均された信号の積み重ねは、誤差を拡大していくのです。
これは流量精度の問題だけではなく、温度依存性や微分非線形性誤差、積分非線形性誤差といった部分も当然拡大されてしまうということです。
とはいってもアナログMFC自体が世界的にみると絶滅危惧種であり、今やデジタルが当然の世の中です。
一部の強烈なノイズ環境ではデジタルMFCが使用できない事も以前はあったが、この分野はデジタルでのノイズ除去技術は飛躍的に改善されており、今や問題なくデジタルMFCが活躍している事例が多いのです。
デジタルMFCは非常に多機能で優秀です。
だが、デジタルMFCの優秀な性能を活かすには、やはりアナログ信号系での制御ではなく、前述のリスクを踏まえて極力アナログデジタルの変換ポイント数を減らしていく方法=デジタル通信による制御ではないか?とDecoは考えます。
マルチPIDによる低流量域の応答性改善、多点補正と実ガスデータを内蔵することでのマルチガス対応、自動調整システム対応により熟練度を必要としない製造工程の実現等、MFCの進化の上で大きなマイルストーンとなった技術がMFCのデジタル化なのです。
ただ、便利なこと、使いやすいこと=性能がよいと言うことではないと言うことです。
たとえるならアナログのレコードと、デジタルのCDやダウンロードミュージックとの差で、今でもアナログレコードを愛聴する層があることに似ていますね。
ただデジタルだから性能がよいと簡単に納得せず、なぜデジタルなのか?とい点に、より踏み込んだ理解を持って頂きたいとDecoは思っています。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan