真・MFC千夜一夜物語 第439話 MFCの歴史を振り返ろう その15
マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
MFCのオリジンの件はひとまず横に置いておき、MFCのその後の歴史の話をしましょう。
最初のMFCと言える製品を世に送り出したのは米国のタイランです。
出典:当時の日本アエラ(株)カタログより
写真のFC-200がそれです。
その後、これをベースに発売されベストセラーとなったのが、FC-260シリーズです。
出典:当時の日本アエラ(株)カタログより
前に解説したようにサーマルアクチュエーターを搭載した本格的な流量制御モジュールであり、半導体製造装置をメインに分析機器等、多くの装置に採用されました。
それに対してユニットもソレノイドアクチュエーターを搭載したMFCを開発し、この2社に流量計測の老舗ブルックスを加えた3社がMFCの市場を形成していったのです。
そこにMKSのようなキャパシタンスマノメーターを主力とするコンポーネンツメーカーも参画し、1990年代までは米国市場はMFC発祥の地として賑わったのでした。
だが2000年代に入ると、米国MFCメーカーは急激な企業淘汰の進行と、半導体産業に過度に依存する体質の脆弱さを露呈することになります。
半導体製造装置業シェア1位のAMAT(Applied Materials)で正式採用され長年シェア1位を堅持してきたユニットは、MFCの元祖であるタイラン直系のタイランジェネラルを買収していたマイクロリス(Mykrolis)から MFC部門を買収しキネティックスとなります。
更に最終的にセレリリティ(Celerity)となり、世界シェアトップの座に君臨していました。
ところが、さらなる拡大を志したが薄利販売と、買収したタイラン系を合わせた多種多様な製品ラインアップの整理失敗による在庫過多で経営体質は悪化し、リーマンショック(Financial Crisis)後に崩壊してしまう事になります。
世界シェア1位のメーカーの崩壊はショッキングでした。
崩壊したセレリティをブルックスの当時の親会社であったAIP(American Industry Partners)が買収することでUSA の三大MFCメーカーはブルックスブランドに統一されることになるのですが、ブルックス経営陣はセレリティ、タイラン系製品の全てを継承するのではなく、ごく一部のみの継承を選んだため、市場の反発は大きかったのです。
本来合算すれば40%超のシェアを得たはずが、そのシェアは急落することとなります。
それでも北米半導体製造装置メーカーに標準採用されたPI機能を持つ第5世代MFCのベストセラーであるGFシリーズが販売に貢献し、現在でも半導体向けMFCの世界シェアの4強に食い込んでいるのいでした。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan