真・MFC千夜一夜物語 第444話 質量流量計のトラブルシューティング その1

2024年08月27日

マスフローコントローラー(以下MFC)を含む質量流量計の基礎に立ち戻って、その原理から生じるトラブルへの対応に関して解説していきます。

先日、コリオリ式MFCをお使いの研究室にゼロが大きくずれるという不具合調査に伺いました。
対象となる製品は予めメーカーに戻していただき確認しましたが、そのような現象は再現せず・・・こういった時は「うちでは再現しませんよ!」という建前論を並べるのではなく、実際に現地環境での調査が一番だとDecoは思っています。

そこでDecoは不思議な現象を目にしました。
確かにゼロが大きくずれるのです。
そして、ゼロリセットコマンドを入れて、ゼロを取り直してもまたずれていく・・・こういった現象は、センサー内部での流体の対流、もしくはMFCの流量制御バルブからの内部リーク(出流れ)と決まっていますので、液を抜いてもらい代わりに窒素を積めて、バルブは全開にして確認してもらいましたが、全く収まりません。

2時間ほど調査して流石にその場にいた全員に諦め感が漂ってきた時、Decoは室内のコンプレッサー、そしてチラーの動作音に気が付きました。
もしやと思い、MFCを配管から外して単独で設置するとゼロずれの現象は無くなったのです。
そして、配管を戻して、今度はそれらの機器を止めてもらってもやはり消えます。
そう、原因は振動影響だったのです。

コリオリ式流量センサーは測定に振動するセンサー管を用いる為に、外部から干渉する周波数の振動を貰うと異常が生じるのは、コリオリのトラブルシューティングの基本中の基本でした。
対策としては、コリオリ式MFCと一緒にお納めしていたマスブロック&インシュレーター(画像は取付状態)を取り付けて頂いたところ、この外乱影響は消えました。

出典:ブロンコスト・ジャパン(株) miniCORI-FLOWシリーズカタログより

そう、数多くの微小流量コリオリ式マスフローを世に送り出してきたブロンコスト(Bronkhorst High-Tech .B.V.)だけあって、ユーザー設置環境によりトラブルに対応できるよう、このようなアイテムを同梱してくれているのです。
今回はこのブロックが重量物なので、実験配管を組む上での取り回しが悪くて使われていなかったのが仇となり・・・

この事例のように質量流量計の測定原理を理解していれば、いざという時のトラブルシュートに役に立ちます。
測定原理そのものが、長所にも短所にもなる・・・
熱で測定するセンサーの弱点は熱、振動で測定するセンサーの弱点は振動なのです。

ですから、改めて今回から熱式、コリオリ式といった質量流量計の流量測定原理に基づいたトラブルシューティングのお話を始めたいと思いますね。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan