真・MFC千夜一夜物語 第445話 質量流量計のトラブルシューティング その2

2024年09月03日

マスフローコントローラー(以下MFC)を含む質量流量計の基礎に立ち戻って、その原理から生じるトラブルシューティングに関して解説していきます。

改めて質量流量計の基礎を解説しましょう。
まず流量という言葉の定義からです。
流量とは読んで字のごとく「流れの量」のことでしたね?
気体・液体等の流体が単位時間当たりに、ある地点を通過する量のことです。
単純な流量を知る方法が発見されたのは、古代ローマに遡り、今日までその基本は変わっていません。

人類が流量を測らなくてはならない理由は、まずは使った流量に応じた料金を算出する根拠としてです。
水道料金、ガス料金、ガソリン料金・・・皆そういった性質のものですね?
これが正確に測れていなかったら、公共性が損なわれてしまうのです。

更に近年になってからは工場等で安定した歩留まりで製品を作る為、つまり製造プロセスの再現性向上に流量を正しく測るというファクターが重要視されることになった事も挙げられます。
これはMFCの主要顧客が半導体製造装置である事に関連しています。
流れる流体の流量を現すのに体積流量と質量流量という二つの捉え方があります。
体積流量は、流体の断面積に流体の流速を掛ける事で求められましたね?
それに対して質量流量は、その体積流量に流体の密度を掛け合わせて求めます。
流れの多少を現す量を求めるのに体積を用いるか?質量を用いるかの差でなのです。

では、流量計とは何だったでしょうか?
流量を計測・測定する目的で使用されるのが流量計でしたね?
そもそも流量自体は圧力のような一つの物理標準で構成されていないので、流れ場を支配する一つ、または複数のパラメータを計って、そこから流量値へ変換するのが流量計の役割です。
故に流体種、流量その他諸条件を満たす流量計を選択することが、正しい流量計測&測定の第一歩なのです。

流量計と名のつくものは多種にわたります。
その中で質量流量計に分類されるのは、上図にありますように熱式とコリオリ式だけです。
質量流量計と体積流量計を比較してみましょう。
気体で考えると、その体積は温度の上昇で膨張し、圧力に上昇で縮小します。
体積流量計は校正条件と異なる温度・圧力条件で運用する際は、読値に対して補正が必要となります。
これを計装業界では温圧補正という言葉で表してます。
だが質量流量計には温圧補正は不要です。
いずれが用いやすいかは言うまでもなく質量流量計ですね?

ただしここで勘違いしてはいけない事があります。
「質量流量に温圧補正は必要か?」という問いに対しては不要でよいが、「では、質量流量計に対する温度圧力による補正は不要か?」という問いに対しては必要となることなのです。

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