真・MFC千夜一夜物語 第447話 質量流量計のトラブルシューティング その4
マスフローコントローラー(以下MFC)を含む質量流量計の基礎に立ち戻って、その原理から生じるトラブルシューティングに関して解説していきましょう。
まずは熱式流量計の不具合対策からです。
熱式流量計の取扱いによるトラブルは非常に多いです。
Decoは現役時代を含めトラブルシュートに駆り出されることが多く、その現場から学んだことがたくさんあります。
経験上一番多いトラブルはゼロのずれ=ゼロドリフトです。
この原因はこのブログでも解説済みですが複数あります。
センサーの巻線部の抵抗値の経時変化、センサー管内の熱対流、MFCの流量制御バルブの内部リーク(出流れ)、調整ミス、設置環境(温度)、外部要因となります。
この中で一番多いのは流量センサーの巻線(ニクロム線)の抵抗値の経時変化です。
図にあるように熱式流量センサーは、ヒーター温度=巻線抵抗値のバランスが傾いた量を流量として検出しています。
巻線型流量センサーは、上流/下流の対になった巻線が、ヒーターと測温抵抗体の役割を果たしており、流量信号を取り出すためのブリッジ回路を形成しています。
これを二線式と呼び、ヒーターと測温抵抗体の役割を分離して、上流測温抵抗体、ヒーター、下流測温抵抗体の3つで構成される三線式もあります。
また、多くのチップセンサー型はこの三線式をMEMS技術で微小サイズに再現したものです。
この対になる測温抵抗体の測定する温度の平衡状態が、流量=0のポイントです。
ここに流体が流れ込んでくると、上流側の熱を奪って、下流側に運んでいくことになり、バランスが変化します。
この時の上流下流での温度変化量が流量に比例する・・・というのが、マスフローに代表される熱式流量計の基本原理でしたね?
流体の移動が無い状態、つまり流量がゼロの位置にあるにもかかわらず、当初の抵抗値のバランスが崩れて、あたかも流量が流れたり、マイナスの表示をしているように見えるのが熱式流量計のゼロずれ問題です。
このずれ量はそのまま測定流量に誤差として乗るので注意しなくてはいけません。
この現象は、多くはマスフローセンサーの寿命が尽きた場合に発生します。
通電状態では常に100℃近い温度を発熱している巻線を何年も使用していると、当然経年変化が生じるのです。
抵抗値が上がり続け断線による機能喪失が起きる場合もあります。
これがマスフローの寿命です。
これはメーカーによるセンサー方式の差や、巻線の個体差もあり、一概に何年とは定義しにくいのです。
昔だと1~2年、最近の製品はメーカーの努力でかなり安定が良くなってきているので、5~8年は断線せずに使えてしまう場合もあります。
だが、断線に至らずとも、抵抗値変化が上流下流の巻線双方に同じタイミング、かつ同じ量だけ発生するような幸運は、まずありえないので、初期の抵抗値バランスはいずれ崩れ、ゼロのずれが発生することになります。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan