真・MFC千夜一夜物語 第449話 質量流量計のトラブルシューティング その6
マスフローコントローラー(以下MFC)を含む質量流量計の基礎に立ち戻って、その原理から生じるトラブルシューティングに関して解説していきましょう。
今回はコリオリ式流量計の不具合対策です。
熱式との付き合いがキャリアの大部分を占めるDecoからすると、コリオリ式は優等生なのです。
なぜならコリオリ式はお客様へ納入後のクレームが非常に少ないのです。
熱式は「ゼロがずれる」、「実ガス流量があってない」、「応答が遅い」といった納品後の問い合わせが非常に多いのですが、コリオリ式ではほとんどそういった問題は無いのです。
やはり、それはコリオリの持つ熱式に対するアドバンテージのお陰です。
コリオリは完全な質量流量計であり、それ故流体種によるCFが存在せず、またコリオリ式はセンサー感度が高くてSN比が良いセンサーなのでゼロずれの問題も生じにくいのです。
流量式にあるようにコリオリ式は流量式に流体の物性値を含んでいません。
流体の物性がよくわかっていない新材料や、刻々と組成や混合比が変化していくような流体でも質量流量測定が可能なのです。
つまり流体や条件毎にCFが存在しないので、熱式のように流体の定圧比熱に左右されたり、温度、圧力、あげくはMFCの分流構造でコンバージョンファクターが複数存在してしまったり、その流体のCFがわからないと正確な流量が測定できないといった事は一切ないのです。
圧力をかけてセンサー管を流体が流れさえすれば、質量流量で測定できてしまうというのが、コリオリ式の優れた流量計としての特長なのです。
そんな完全な質量流量計であるコリオリ式では冒頭の話のようなトラブル事例は稀です。
稀ではあるがないわけではありません。
なぜならコリオリの長所を産みだす流量センサーの測定原理がそこに絡んでくるからです。
熱式流量計の弱点は熱影響であったのと同じく、振動系のコリオリ式流量センサーの弱点は、やはり振動なのです。
コリオリ式流量計の中でも特に微小流量域を得意とするブロンコストのmini CORI-FLOWシリーズは、その流量レンジによっては内径1mmを下回る細径で長さが50cm以上あるステンレスチューブを使用しています。
出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
こういった細管が流量センサーとして振動しているコリオリ式マスフローに、コンプレッサーのような振動源が近接して設置されていた場合、振動の周波数が干渉するとコリオリ式センサーに影響を及ぼしてしまい、ゼロがズレ続けるという前述のようなトラブルを起こしてしまうのです。
複数台のコリオリ式マスフローを近接して同じ構造体上に並べて設置しても相互干渉(クロストーク)を起こす可能性もあります。
単体では影響を受けなくても、接続された前後の金属配管がその振動を受けてしまう事で影響を及ぼすこともあります。
コリオリ式マスフローと接続された1/8インチの配管が固定されておらず、それがポンプの振動を拾って自身も振動してしまうという振動のアンテナのような役割を果たして問題を起こしたこともありました。
いずれの場合も振動の周波数によって、ポンプやコリオリが近接すれば必ず起きるわけではないのですが、不幸にもこういった現象に見舞われた場合は、まずは機器の配置を変えるか、それが不可能ならば金属配管とコリオリ式マスフローの間に樹脂配管のような振動のバッファーになるものを置く、周辺の配管類をしっかり固定する、もしくは重量ブロックにインシュレーター(制振材)を配したマスブロックにマスフローをしっかり固定してやることで振動影響をかなり取り除く事が出来ます。
今回の不具合事例は配管作業の必要性からマスブロックを外して使用した場合に発生したものであり、この振動対策を取れば解決できるものでした。
マスブロックを使えば画像のように複数のコリオリ式マスフローを直近で並べても問題ないのです。
出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan