真・MFC千夜一夜物語 第460話 質量流量を用いた最新アプリケーションは? その4

2025年01月14日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)を紹介しています。

コリオリ力は1835年フランスの物理学者ガスパール=ギュスターヴ・コリオリ(Gaspard-Gustave Coriolis)が発見した回転座標系における慣性力の一種です。
この回転系に発生する慣性力としてのコリオリ力を流量検出原理としたのがコリオリ式流量計の流量センサーです。
このセンサーでは、配管系を回転させる代わりに振動を与えています。
振動と回転は異なる運動系に見えますが、図のように回転軸に対し垂直方向からフォーカスすると、実は同じ動きをしている運動系であることが理解できます。
コリオリ式流量センサーは、回転系に発生する慣性力であるコリオリ力を取り出す目的で作られた仮想回転系と考えてもらっていいでしょう。

一般的なコリオリ式流量計の構造は2本のU字型チューブを使用しており、それらを逆位相で振動させます。
流体が流れると質量流量に応じたコリオリ力が作用して、振動する2本のチューブには位相差が発生し、捻れが発生します。
流体が進入する側の左側ではコリオリ力は共に2本のチューブの内側に働き、流体が出る右側は流体の向きが180度変わって外側に働くのです。
ここで流体が流れたときの位相差を測ればコリオリ力、ひいては流体の質量流量を算出できるのですが、実際それをリアルタイムで測定するのは難しいので、左右のチューブが振動の中立点(捻れ角=0位置)を基準点としてそこを通過する時間差Δtを位相差として測定することが多いのです。
コリオリ式流量計には、チューブを振動させるオシレーター(発振回路)と、左右の捻れを検出するピックアップ(検出回路)が配置されているのが一般的です。

図で示した流量式にあるように、コリオリ式流量計の測定原理には、同じ質量流量計である熱式流量計の比熱のような流体の物性に関わるものが一切含まれていません。
これは「コリオリ式は流体を選ばず質量流量を測定できる」という事を意味しており、流量計として画期的なポイントとなっています。
なぜなら製薬や半導体のような技術革新ペースが速い産業分野では、物性が不明な新材料というものが日々登場してくるからです。
たとえ物性は特定できていても、温度・圧力条件が安定した状態で、流量を測定できるとは限りません。
環境条件の変化で刻々と物性が変化する流体、そして複数流体の混合流体に至っては、測定現場においてその混合比率が常に一定となるとは限らないのです。

このような用途では、たとえ質量流量計であっても、流体種を特定できないと流量測定ができない熱式流量計は使いにくいです。
かろうじて同一条件下での繰り返し性を担保できるに留まるのですから・・・
物性の不明確な流体を質量で流量測定できるコリオリ式流量計のメリットは限りなく大きいと言えるのです。

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