真・MFC千夜一夜物語 第468話 MGMRを正しく理解する その5

2025年03月18日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
この章では"マルチガス・マルチレンジ(以下MGMR)MFC"の解説を再び行っています。

初期のデジタルMFCでも1ガス=1つのコンバージョンファクター(以下CF)ではないガス種には対応できないという問題が鮮明になっても、それでもマスフローメーカーの技術者達は諦めませんでした。この問題を考察した結果、やはりMFCの更なる進化が必要だという結論に達したのです。
CFデータを1つしか運用できない初期デジタルMFCのハード性能の改善でした。
乱暴に言えば、「複数のCFで対応しなくてはいけないのなら、全部MFCに憶えさせてしまえ!」ということです。
実はこれ自体はそんなに難しいことではありません。
既にデジタル制御に進化したMFCであり、低流量設定での応答性能向上のために、設定流量に応じてマルチPID制御化するという技術は開発済みでしたし、そもそもデジタル化したことで、EEPROM等に各種調整データを書き込めるエリアがありましたから、アナログ時代のトリマー(可変抵抗ボリューム)を調整して一点決めの調整をしていたMFCとは比較にならない拡張性能を持っていたのです。
むしろ問題はそれ以外の部分、ハードよりもCFデータの蓄積にあり、MFCはMGMRタイプへの進化を促されることになったのです。

MGMRと言っても、基本構造は従来のMFCと同じフォーマットを踏襲しており、その構造上の限界から、1台で全てのガス・流量に対応できるスーパーマン(スーパーMFC?)は存在しません。
単純に流量レンジによりバルブ、オリフィス、層流素子が異なるというだけではありません。
CFという観念は一般的にMFCの熱式センサーの感度比に着目していますが、ガス種による流量制御バルブの制御特性の変化というファクターも存在するからです。

メーカーの社内調整で用いるバルブ設定を決定するファクターがあり、例えば窒素用に調整されたMFCに、水素(H2)を流すと、CFは近似値だが、バルブのオリフィス径は全く異なるので、思いっきりハンチングして制御不良状態を引き起こしたりします。
その為、現実には窒素換算したF.S.流量レンジ(メーカーにより異なるが、だいたい5SCCM~50SLMというMFCにとっての一般的なレンジ)に対して十数種のMGMRタイプMFCを予めラインアップすることで対応しています。
従って個々のタイプには流量レンジの守備範囲が存在し、これを超えてのガス種/F.S.流量レンジの変更は出来ないのでした。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan