真・MFC千夜一夜物語 第469話 MGMRを正しく理解する その6
本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
6回にわたって"マルチガス・マルチレンジ(以下MGMR)MFC"の解説を再び行っています。
今回は最後にMGMR MFC運用上の注意をお話ししましょう。
2000年代のデジタル制御で進化の恩恵を被ったのは、MFCという機器も例外ではありませんでした。
デジタル化がもたらした最大の進歩がMGMRです。
圧力上昇率を用いた流量検証方式等で各メーカーが苦労して蓄えてきた貴重な実ガスデータベースに支えられて、今やMGMRはMFCの主力として認知されています。
なによりもユーザーサイドでパソコンと通信ケーブルを用意すれば、誰でも簡単な操作でガス種とF.S流量を変更できるのだから、便利なことこの上ない製品なのです。
では、そんなMGMRの弱点は何でしょうか?
1つは実ガスデータに添って補正した流量直線性の特殊性です。
MGMRで実ガス仕様に調整したMFCに窒素を流した場合、場合によっては図のように直線性の悪い制御結果になってしまうことがあります。

これは至極当たり前の話です。
実ガスできれいな直線性を示せるよう、レンジに応じて実ガスを窒素に換算した値を補正として入れ込んであるMGMR-MFCは、逆に実用途で窒素を併用して流す場合にこういった現象が起きてしまいます。このように実ガスと窒素を一つのMFCで交互に流すようなプロセスを考えておられる場合は要注意です。
こういった場合、流すガスを切り替える都度、MGMR-MFCに対してガス種書き換えを行うべきなのですが、装置側から都度書き換えるよとなると、その書き換え時間が問題になる可能性があります。
たとえ数十秒でもプロセスによっては待てないこともあるからです。
こういったプロセスでは、従来のCFベースのMFCが逆に喜ばれることもあるのです。
もう1つはユーザーの認識です。
今までのMFCのガス種・F.S.流量は、メーカー出荷状態で固定されており、よほどの事がない限りユーザーサイドで変更されることはありませんでした。
ところが、MGMRは、前述の通り誰でも簡単な操作でガスと流量を変更できてしまいます。
これは諸刃の剣でもあるのです。
「操作ミスで違うガスに変更してしまった・・・」
「在庫品のガスが変更されているのを認識せず、間違ったラインで使用してしまった・・・」
なまじ便利にガス種、流量レンジを書き換えられるのが仇になり、間違ってMGMR変更を行ったMFCにガスを流してしまえば、場合によってはプロセスに大きな問題を引き起こしかねないのです。
「窒素でフルスケール1SLMのMFCは、メタンや六フッ化硫黄にMGMR変更しても1SLMのMFCになるべきだ」というユーザーのMGMRに対する誤認には、マスフローメーカーに籍を置いていたDecoとしては、自身のMGMR啓蒙活動が不足していたことを大いに反省させられました。
このブログの解説を読んでもらえば、MGMRはCFというMFCに関わる人々を悩ませ続けた呪縛から、一歩前進するツールであって、決して魔法の技術ではないことは理解いただけたと思います。
技術は試行錯誤の積み重ねであり、それゆえMGMR誕生以前に遡った解説を今回は行いました。
皆さんの理解の一助になればと思います。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan