真・MFC千夜一夜物語 第473話 MFCを取り巻くデジタル通信環境 その4
本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
第470話からデジタル通信の現状に関して解説をしています。
前回は脱線しましたが、今回からマスフローの話に戻りましょう。
本来マスフローが最初に世に出た1970年代のI/Oはアナログで、内部のPID制御回路もアナログでした。(マスフローが誕生した頃には、事実上アナログ信号での制御系しかこの規模の産業分野には存在していなかったのです。)
I/Oで使用されるアナログ信号に関しても電圧信号の0-5VDCが主流でした。
デジタル制御化されたマスフローは日本では1990年代に販売が始まりました。
その画期的な第一世代デジタルマスフローで提唱されたのは、デジタルPID制御を行い、デジタル通信I/Oを備えたマスフローでした。
デジタルマスフローは、デジタルPID制御により応答性と精度性能の改善がめざましく、特にマルチPID定数を持たせたことで、低設定時の応答性能向上は注目を集めました。
それに加え、今までのアナログ信号で行ってきたマスフローとの信号のやり取りを、PCとダイレクトにRS232C通信を介して行うことが可能になる技術革新も盛り込まれていたのです。
それまでも製造装置側で信号をD/A、A/D変換して制御を行っていたのだが、ダイレクトでMFCとデジタル通信ができる利点が生まれたのでした。
ただ、当時はまだパソコンも一般には普及しておらず、それを駆使してデジタルマスフローを活用するというのは、なかなか敷居の高いものでした。
半導体装置メーカー等では、基本的に依然としてアナログマスフローが使用されていました。
その理由はマスフロー各社で統一されていなかったプロトコルにあったのです。
装置メーカーで本格的にデジタルマスフローが採用されるには、次世代デジタルマスフロー=DeviceNetなどのフィールドバス(Fieldbus)により統一規格化されたプロトコルで使用できるモデルが登場するまで待つ必要があったのでした。
マスフロー業界でのフィールドバスの代表格であるDeviceNetはドイツのボッシュ社のCAN(Controller Area Network)技術をベースに開発され1994年にUSのアレン・ブラッドリー社が発表したRS485をベースとしたFA向けの制御ネットワークです。
「通信の規格化」が行われた上で、オープンネットワークとして開放されているのが特長で、例えば同じDeviceNet を使用する場合、マスフローや圧力センサー、バルブといった配管機器間の通信には互換性が確保されます。
アレン・ブラッドリー社は、ODVAという組織を作り、現在はODVAがDeviceNetを所有、管理しています。
ベンダー(MFCメーカー)はODVAに参加することで、DeviceNetの仕様を開示され、それに対応したマスフローを開発できるのです。
デジタルマスフローの黎明期のように「RS232CやRS485のような規格は共通でも、プロトコルはメーカー個々に構築された結果、各々の互換性に乏しくなる」という問題を解消されたのでした。
フィールドバスの似通った規格として欧州のProfibus、日本のCC-Link等が存在し、同様に装置制御に用いるPLCメーカーが旗頭になっていた為、地域ごとに、そしてPLCメーカーごとにネットワーク規格は存在してしまいました。
どのフィールドバスネットワークを選べばよいのか?は悩みの種になりました。

出典:HMSインダストリアルネットワークス(HMS Industrial Networks)
結果として現在では、図にあるようにそれ自体のトータルシェアは3%しかないDeviceNetが300mm半導体製造装置向けMFCでは圧倒的なシェアを擁しているネットワークなのです。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy